京都大学大学院教育学研究科 明和政子 研究室

日本語 | ENGLISH

ニュース

【メッセージ】子育てに関わっておられるすべての皆様へ

 新型コロナウイルスは,私たちの日常をあっという間に奪い去りました.自然の猛威の前に,人間は非力であることを改めて思い知らされました.子どもたちの日常が突然奪われてから数か月.社会が分断されていく状況,先の見えない不安は,大人だけでなく,大人に依存して生きている子どもたちにも,(自覚されない)ストレスを急激に高めているはずです.

 

 私たちヒトは,他者・社会と強く結びつきながら進化してきた生物です.他者・社会の中でしか生存することができないのです.他者と「身体」を介して触れ合い,コミュニケーションすることが,ヒトが生きる上での基本的活動です.家にいましょう,他者と会う機会を8割減らしましょう.そうした生活を求められる現状は進化的にもきわめて異様です.進化の産物であるヒトの身体,脳や心がいつものように働かなくなるのは当たり前なのです.そうした根幹を理解し,弱っている自分を責めたり,頑張りすぎることはやめましょう

 

 もうひとつ,皆様にお伝えしたいことがあります.

 社会的動物である私たちは,今こそ,他者とのつながりを積極的に求めることが必要です.身体を介したコミュニケーションは無理でも,これまで他者とつながり生きてきた私たちは,その経験を土台に,例えば本や情報技術を活用して他者の心を感じることができます.本を読めばその登場人物に心を重ね,想像することができます.インターネットを介して他者の笑顔をみれば,身体を介して経験したかつての感覚を思い出すことができます.

 今,私たちは自分の内面に偏って注意が向きがちです.他者の目から自分はどう映っているのだろう,自分のふるまいは他者にどのような影響を与えているのだろう,といった,外側から自分を見つめる機会が日々減ってきているように思います.私たちは,他者を鏡としながら自分を感じて生きてきた生物です.これまでのコミュニケーション様式とは異なりますが,他者の心に触れる機会を積極的にもつことで,「外側の世界からの風を感じられる」「他者から支えられている」自分を意識的に感じるようにしましょう.

 

 今の苦しみを乗り越えた先には,他者と社会とのつながりを,その幸福をより強く感じられる生活が待っているはずです.共につながりながらこの苦難を乗り越えていきましょう.

 

2020年4月24日  明和政子

  • 京都大学
  • 京都大学教育学部

↑